外見は変わっても思い出までは変わらない

住宅ローンを完済し、ようやく暮らしが楽になると思った矢先、妻はあの世に行ってしまった。
完済し終えた自宅は築30年が経ちアチコチにガタが出ている、妻とはリフォームをするか建て替えるかを話していた。
私、「どうする?」
上の息子、「まだ、良いんじゃない」
下の息子、「建て替えるのは勿体ないよ、まだ住めるのに」
2人の息子は母親の思い出が詰まった家を残しておきたいのだろう、言葉にはしないが。
家事は一切、妻に任せていたため、食事は外食ばかりに、すると、子供たちは家に帰って来なくなった。
妻が生きている間は、飲みに行くのは週1.2回だったのだが、妻があの世に行ってからの私は、毎晩、飲みに行っている。
妻が生きている間は、同僚らと酒を飲むのが楽しかったのだが、妻があの世に行ってからは、妻のいない家に帰るのが辛い、2人の息子もそうなのだろう。
妻に先立たれた同僚が、「思い出さないように、奥さんのモノを処分したら」、そうするのが良いのだろうが、私には出来ない。

妻が使っていたパソコンを見てみると、外壁塗装の業者が数社ブックマークされていた。
妻の意志は残された家族同様、建て替えはしない。
そのことを息子達に話すと、「母さんがブックマークした業者に外壁塗装をしてもらったら」。
息子達も今のままの生活を続けるのはダメだと思っており、変わるキッカケを望んでいた。
外壁塗装は下地と同じ色に塗るのが一般的だと思うが、私は妻から度々、「あなた、ワンパターンね」と言われており、下地とは違う色で塗ってもらった。
下地と同じ色で塗装をすると思い込んでいた息子達は「どうして変えたの」と私に怒ったが、妻は私の決断を喜んでくれているだろう。
外壁の色を変えたことで家の雰囲気は変わった、すると、息子達は家に帰って来るようになった、私が酒を飲みに行く頻度も昔に戻った。

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