ハラハラドキドキの外壁塗装

私が親から引き継いだのは創業100年以上が経つ老舗店、世間からは「風格のある建物ですね」と褒められる店舗だが、アチコチにガタが出ていた。
私が引き継ぐのをキッカケに店舗を建て直す案も出たのだが、近隣住民やお客さんから「歴史のある店舗を残して」と言われたら、建て替えは断念。
改築をするにしても建物が古いと建て直すと変わらないほどのお金が掛かる、お金は掛かっても内装のリフォームは自分達の一存だけで行える、しかし、外観をイジるとなると隣接する家の同意を得なくてはならない、なぜなら、隣接する家の土地に足場を組む必要があるから。
今まで大掛かりな改築が出来なかったのは、隣接する家と揉めたくなかったから。
隣接する家ではワンワン吠えまくる大型犬が敷地内で放し飼い、駐車場には黒塗りの高級外国車、しかも、道に大きくはみ出て停まっている。
家は隣同士なのだが付き合いはない、付き合いたくはない種の人、そのため、うちの店舗がなかなか改築出来ない事情は近隣の人は皆知っている。
ある日、普段通り営業をしていると近所に住む顔馴染みが、「お隣さん引っ越すらしいわよ」
お隣さんとは、ワンワン吠えまくる大型犬を飼っている例のお隣さんのこと。
私、「本当に?」
顔馴染み、「間違いない。外観の改築をするなら今しかないよ」
そうだとは思っても、内装工事をしたばかりで外観をイジる余裕はない。
躊躇っていると近所の顔馴染みの不動産屋が来て、「建物の塗り替えをするなら今しかないぞ」。
お金をかき集め、お隣さんが引っ越すのを待った。
暫くすると、お隣さんと似たようなキャラの人が数人で引っ越しを始めた。
その様子を離れて見ているだけで、誰も「引っ越しですか?」とは聞かない、イヤ、聞けない。
引っ越しが完了したら、顔馴染みの不動産屋が手配してくれ外壁塗装を行うことに、ここらは時間との勝負。
近隣住民から避けられるような者が住んでいた物件には、マトモな人は引っ越して来ない。
しかし、どんなに焦っても、いい加減な外壁塗装をしてしまったら老舗店の風格は損なわれてしまう、塗装が剥がれ隣接する家に迷惑になれば火種となってしまう。
外壁塗装期間中の私はイチャモンを付けられないかビクビクしていた、業者さんもドキドキハラハラしながら外壁塗装をしてくれた。
おかげで外壁塗装は無事済んだ、これで20年は外壁塗装をせずに済む、これで誰が引っ越して来てもトラブルにならずに済むと思っていると、隣接する家に誰かが引っ越して来た。
引っ越し作業は挨拶もなく行われたため、また、以前と同種の者が引っ越して来たのだろう、無理をしてでも外壁塗装をして良かった。

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