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時が経つのは早い

家の塗り替えに来た業者さんが言った、「ずいぶん、木が大きくなりましたね。昔は坊っちゃんの背丈ほどの高さでしたよね?」
業者さんが言う坊っちゃんとは、私の一人息子のこと。
私の旦那は地方に出張や転勤が多く、家族で過ごすのは年に数日だけ。
父親に遊んでもらったことがない息子にとって、塗装業者さんとするキャッチボールは楽しかったことだろう。
今回の塗り替えは3回目、1回目の時も2回目の時も旦那は地方に仕事へ行っており、自宅を塗り替えたことに気付いていない。
塗装業者さん、「坊っちゃんは幾つになりました?」
私、「もうアラサーのオジサンです」
塗装業者さん、「早いものですね」
私が話している塗装業者さんも昔は若かった、初めて家の塗り替えをしてもらった時には、先代の親方さんが健在で良く怒られていた。
その怒られていた職人さんが、現在は親方さんになって若手に檄を飛ばしているのだから、皆、歳を取った。
塗装業者さん、「坊っちゃんは?」
私、「結婚をして、私達と一緒に暮らしています」
塗装業者さん、「あの三輪車は?」
私、「息子の子供のです」
塗装業者さん、「ということは、お孫さんですか?」
私、「はい、私、お婆ちゃんになりました」
初めて家の塗り替えをしてもらった時の私は30代、それから30年も経つのだから、私も塗装業者さんも髪に白いものが混じっていても不思議でない。
私、「お仕事の邪魔をしたらダメよ」
孫、「キャッチボールをしてるの」
孫は塗装業者の若手の人に遊んでもらうのが楽しくて仕方がない、その様子を家の中から見るのは30年前と同じ。

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